「自社のサービスを改善したいが、顧客の本音がわからない」
「新商品の企画に向けて、根拠のあるデータがほしい」
自社サービスをより効果的に展開するために、アンケートによる市場調査を検討している担当者も多いのではないでしょうか。
市場調査の手法のなかでも、アンケートは低コストで多くの意見を集められるメリットがあります。しかし、設問の設計や分析方法を一歩間違えると、実態とは異なるデータが導き出されるため、注意が必要です。
そこで本記事では、市場調査におけるアンケートの基礎知識や精度の高い回答を得るための作成ポイント、結果を施策に活かす分析のコツまで徹底解説します。
信頼性の高いデータを収集し、意思決定のスピードを加速させたいと考えているなら、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
市場調査におけるアンケートとは
マーケティング戦略を立案する際、欠かせないプロセスが「市場調査(マーケットリサーチ)」です。なかでもアンケートは、消費者の意識や実態を数値化して把握する「定量調査」の代表格といえます。
ここでは、アンケート調査の定義や役割、他の調査手法との違いを紹介します。
アンケート調査の定義
アンケート調査とは、特定の対象者に対して同一の質問を行い、その回答を収集・集計・分析する手法を指します。
あらかじめ用意された選択肢から回答を選ぶ「選択式(クローズド・クエスチョン)」を中心に、統計的な処理がしやすい点が最大の特徴です。
市場調査の文脈では、ターゲットとする市場の全体像を把握したり、自社製品の認知率や満足度を客観的に測定したりする目的で広く活用されています。
市場調査におけるアンケートの役割
アンケートの主な役割は、仮説の検証と現状の可視化です。
例えば「新商品のコンセプトは30代女性に響くはずだ」という仮説に対し、実際にアンケートを行った結果、30代女性の支持率は「◯%」と具体的な数値で裏付けられます。
勘や経験、社内の声といった主観に偏りやすい判断を抑え、エビデンスに基づいた経営判断を下すための強固な土台となるのが、アンケート調査の本質的な役割です。
時系列で継続的に実施すれば、市場のトレンド変化や自社施策の効果測定を定点観測できるメリットもあります。
他の調査手法(インタビュー・観察調査)との違い
市場調査には、アンケート以外にも「インタビュー(定性調査)」や「観察調査」といった手法があります。
インタビュー調査は、対象者と直接対話しながら深い洞察を得る調査手法です。アンケートでは把握しきれない感情や背景、潜在的なニーズを掘り下げられる点が強みですが、実施に時間とコストがかかり、大規模なデータ収集には向きません。
観察調査は、消費者の実際の行動を観察・記録する手法です。店舗内での動線分析やWebサイトの閲覧行動分析などが該当します。言葉にならない無意識の行動パターンを把握できる一方、行動の理由や背景までは分析できないという限界があります。
アンケート調査は、大規模なデータを効率的に収集でき、統計的な分析が可能という特徴があります。ただし、回答者の主観に依存するため、実際の行動と回答が異なる場合がある点がデメリットです。
それぞれの特徴を理解し、目的に応じて使い分けたり併用したりすると、より深い洞察が得られるでしょう。
アンケートを使った市場調査のメリット・デメリット
アンケート調査は適切な場面で活用すれば高い効果を発揮しますが、万能ではありません。
メリットとデメリットを正しく理解して、適切に活用しましょう。
アンケート調査のメリット
アンケート調査のメリットは、一度に大量のデータを効率よく収集できる点にあります。
特にインターネット調査を活用すれば、数千人規模の回答を数日で集められます。また、回答が数値として算出されるため、社内会議やクライアントへの提案資料において説得力のある根拠として提示しやすい点も魅力です。
インタビュー調査に比べて一人あたりの調査単価を低く抑えられるため、予算の限られた中小企業にとって非常にコストパフォーマンスの高い手法といえます。
アンケート調査のデメリット
アンケート調査の大きなデメリットは、回答の「深さ」には限界がある点です。
あらかじめ用意された選択肢の中から回答を選ぶ形式では、選択肢に含まれない微妙なニュアンスや、予想外の回答を拾い上げにくいという性質があります。
また、回答者が「社会的に正しいと思われる回答」を選んでしまったり、設問数が多いと回答が適当になったりと、回答の質にばらつきが生じるリスクも考慮しなければなりません。
アンケート調査のデメリットを補うためには、設問設計の技術が極めて重要となります。
市場調査におけるアンケート調査の4つの種類・方法

アンケート調査をする際、目的に応じた調査手法の選択が重要です。ここでは代表的な4つの方法を紹介します。
【アンケート調査の種類・方法】
- インターネット調査
- 郵送調査・留め置き調査
- 街頭・会場でのアンケート調査(CLT)
- 調査員調査(電話調査・訪問面接調査)
1.インターネット調査
インターネット調査は、現在の主流となっているアンケート手法です。調査会社が保有するパネル(調査協力者)に対して、メールや専用アプリで回答を依頼します。
スピード感が非常に早くコストも安価であるため、広範囲の属性から意見を募るのに最適です。
ただし、ネット利用頻度の低い高齢者層へのリーチが弱くなる問題や、謝礼目的の不正回答者の混入リスクなど、一部の属性に偏りが出る可能性がある点には注意が必要です。
2.郵送調査・留め置き調査
郵送調査・留め置き調査は、対象者の自宅に調査票を郵送し、記入後に返送してもらう、あるいはスタッフが直接配布して後日回収する手法です。
インターネット調査ではリーチしにくい、高齢者や特定の地域住民などへの調査に向いています。また、じっくり時間をかけて回答してもらえるため、長文の回答や複雑な設問にも対応しやすい点がメリットです。
ただし、印刷代や郵送代、データ入力代などのコストが高くなり、回収までに数週間の期間を要するという欠点があります。
3.街頭・会場でのアンケート調査(CLT)
駅前やショッピングモールなどの路上で声をかける「街頭調査」や、特定の会場に回答者を呼ぶ「会場テスト(CLT)」も、アンケート調査のひとつです。
新商品の試食・試飲を伴う調査や、パッケージのデザイン評価など、実物を提示してその場で反応を確かめたい場合に向いています。
ただし、会場費や運営スタッフの人件費がかさむ点に注意しましょう。また、調査する場所の特性によって回答に偏りが出やすい側面も、考慮する必要があるでしょう。
4.調査員調査(電話調査・訪問面接調査)
調査員調査とは、専門の調査員が対象者に対して直接聞き取りを行う手法です。電話帳やRDD(電話番号を無作為に生成する方法)を用いた電話調査や、一軒一軒訪問して聞き取りを行う訪問面接調査が該当します。
最大の特徴は、データの信頼性と精度の高さです。
訓練を受けた調査員により回答者の本人確認が確実に行えるだけでなく、設問の意図を正しく伝えて「回答の質」を高められます。主に選挙情勢の調査や世論調査など、高い無作為性と正確性が求められる場面で用いられる手法です。
ただし、近年はプライバシー意識の高まりにより、個人の協力が得にくい傾向です。BtoBにおける特定企業の決裁権者へのヒアリングのような、特殊な用途で使われるケースが増えています。
アンケート内容作成時の4ポイント
アンケート調査の成否は、質問設計の良し悪しで決まるといっても過言ではありません。ここでは、効果的なアンケートを作成するための重要なポイントを解説します。
【アンケート内容作成時のポイント】
- 調査目的を明確にする
- 回答しやすい質問文を作成する
- 回答バイアスを防ぐよう設計する
- 選択式・自由記述を使い分ける
1.調査目的を明確にする
「とりあえず色々なことを聞いてみたい」という調査目的が曖昧な状態で作成を始めると、設問に一貫性がなくなり、結果的に活用できないデータが並ぶリスクがあります。
調査票を作成する前に、以下の3点を言語化してください。
- 背景:なぜ今、この調査が必要なのか
- 目的:この調査で何を明らかにしたいのか(例:離脱要因の特定)
- 活用イメージ:結果が出た後、具体的にどのような意思決定を行うのか
「新商品のターゲット層を特定する」「既存サービスの解約理由を特定する」など、何を明らかにするための調査なのかを言語化しましょう。目的達成に直結する質問だけを厳選すると、回答の質を高められます。
2.回答しやすい質問文を作成する
アンケートの質問文は、専門用語や業界用語を避け、小学生や中学生が読んでも同じ意味に解釈できるわかりやすい言葉を選びましょう。
特に注意すべきは「ダブルバーレル(二重質問)」です。
例えば「このアプリは使いやすくて、デザインもよいと思いますか」という質問は、操作性はよいがデザインは不満という人が回答に困ります。1つの設問には、1つの要素だけを含めるのが鉄則です。
また「しばしば」「ときどき」といった主観に左右される表現ではなく「週に3回以上」といった具体的な数値で提示すると、回答しやすくなるでしょう。
3.回答バイアスを防ぐよう設計する
質問文の文言が回答を誘導してしまう「バイアス」には細心の注意を払いましょう。結果として、データの信頼性を損なう恐れがあります。
例えば「多くの人が絶賛しているこの機能について、どう思いますか」という質問は、肯定的な回答を促す誘導尋問です。
また、特定のブランドの不祥事について聞いた直後に該当するブランドの好意度を聞くと、スコアは低く出やすくなります。
質問文を作成する際には、中立的な立場からの問いかけを意識し、選択肢の順番もランダムに表示させるなどバイアスを排除する工夫をしましょう。
4.選択式・自由記述を使い分ける
「はい・いいえ」の二者択一や5段階評価といった選択式は、集計の効率化と数値化に不可欠です。
一方、数値化できない具体的な理由や改善のアイデアが欲しい箇所には、自由記述欄を設けます。
ただし、自由記述が多いと回答者の負担が増えるため、途中離脱の原因となります。自由回答の設置箇所は、1つのアンケートに1〜3つほどに絞りましょう。
アンケート実施時の3つの注意点
質問項目を作り込んでも、適切な実施方法を選ばなければせっかくの設計が活かされません。
ここでは、実際にアンケートを実施する際の注意点を3つ紹介します。
【アンケート実施時の注意点】
- 適切な調査対象(サンプル)を設定する
- 個人情報の取り扱い・プライバシーへの配慮を徹底する
- 調査期間・実施タイミングに注意する
1.適切な調査対象(サンプル)を設定する
アンケートを実施する際には、適切な調査対象を選びましょう。いくら回答数が多くても、ターゲットから外れた人の意見を集めては意味がありません。
例えば、若者向けのコスメ開発のための調査で、40代以上の回答が混ざっていては結論を見誤ります。本調査の前に、自社商品のターゲット層(年齢、性別、居住地、興味関心など)に合致するかを確認する「スクリーニング質問」を必ず設け、有効回答の純度を高めましょう。
また、統計学的な観点から「何人に聞けばよいか」というサンプルサイズの設定も重要です。全国規模の調査であれば、誤差5%程度を許容範囲として400〜1,000サンプル程度を目安に確保するとよいでしょう。
2.個人情報の取り扱い・プライバシーへの配慮を徹底する
アンケートでは属性情報の収集が必要になるケースも多いですが、個人情報保護法に準拠した管理が必須です。
「収集したデータは統計的に処理され、個人が特定されることはありません」「本調査以外の目的で使用することはありません」という一文を冒頭に明記してください。
利用目的を明示し、回答データが統計的に処理され個人が特定されない旨を伝えると、回答者は本音を書きやすくなります。
3.調査期間・実施タイミングに注意する
回答結果は、実施するタイミングによって変動する可能性があります。
例えば、冷感グッズの需要調査を冬に行っても正確なデータは得られません。
Webアンケートの場合は「曜日」や「時間帯」も回答結果に影響を与える要素です。主婦層であれば平日の昼間、ビジネスパーソンであれば通勤時間帯や夜間、休日に配信すると、回収率が向上するだけでなく回答の偏りを防ぎやすくなります。
大規模なニュースや事件が起きた直後は、消費者のマインドが一時的に変化している可能性があるため、時には実施を遅らせる判断も大切です。
アンケート結果の分析と活用の3つのコツ
アンケートを実施して回答を集めただけでは、市場調査は完了していません。集計したデータを適切に分析し、施策に落とし込むことで、初めて価値が生まれます。
ここではアンケート結果の分析と活用のコツを3つ紹介します。
【アンケート結果の分析と活用のコツ】
- 単純集計とクロス集計を使い分ける
- データの背景にあるストーリーを読み解く
- 調査結果を施策や意思決定に適切に落とし込む
1.単純集計とクロス集計を使い分ける
アンケートの実施が完了したら、まずは調査の全体像を把握するために「単純集計」を行いましょう。「全体の何%が満足しているか」というマクロな視点で、数字を確認してください。
次に、属性(性別、年代、未既婚、購入頻度など)と掛け合わせる「クロス集計」を実施します。
「全体では満足度が高いが、実は20代女性の層だけが極端に満足度が低い」「高頻度で購入している人は、機能面よりもデザイン面を評価している」といった、ターゲット別の傾向が浮き彫りになります。
2.データの背景にあるストーリーを読み解く
数値の変化には、必ず理由があります。
過去の調査結果と比較して特定の数値が落ちているなら、市場環境の変化や競合の台頭がなかったかを照らし合わせましょう。
例えば「競合他社が値下げした」「期待していた価値(コスパ)を感じられなくなった」といった要因が考えられます。
また、自由記述欄に記載された具体的な声と、数値を結びつけた分析も必要です。「なぜその結果になったのか」という背景も、理解しやすくなるでしょう。
3.調査結果を施策や意思決定に適切に落とし込む
分析をしてレポートを作成するだけでは、市場調査の目的は達成されません。得られた結果を、次のような具体的なアクションに変換しましょう。
- 商品開発: 評価の低かった機能Aを廃止し、要望の多かった機能Bを強化する
- プロモーション: ターゲット層が最も利用している媒体に広告予算を集中させる
- カスタマーサクセス: 不満の要因となっているサポート体制の待ち時間を改善する
アンケート調査を最大限に有効活用するためには、調査結果を共通言語として社内で共有し、エビデンスに基づいてPDCAサイクルを回し続ける必要があります。
また経営層に報告する際は、グラフや図表を活用したわかりやすい資料を作成し、整理した情報を提示しましょう。
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